結論から言うが、俺は今ウマ娘のアプリを「かなり」やっている。起きている間ずっとやっていた日もある。G1とURAのトロフィー計35個はもう埋まった。30人満員御礼のサークルで、なんとリーダーをやらせてもらっていたりもする。
しかし、俺のちょっと前のSNSでの言動を知っている人は、「お前ウマのアンチだったろ?」と思うかもしれない。それはある程度正しいし、その時抱えていた不満点が別に氷解したわけでもない。そこで、せっかくブログなんて便利なものを使っているわけだし、この際全て言語化してしまおうと思い、この記事を書き始めた次第だ。
競馬を知らなくても読める。ウマ娘も別に知らなくていいと思う。メインコンテンツは俺の自分語りだ。サークルメンバーには恥ずかしいからちょっと読んで欲しくないかもしれない。そんな記事になる予定だ。
俺と競馬
俺が人生で初めて競馬を見てから20年、自分の意思ですすんで観るようになってからは約9年が経つ。それ以来、オタク趣味と同じ、あるいはそれ以上の強度の柱として、俺の人生(の特に週末)を彩り続けているのが、競馬だ。
競馬の魅力は多岐にわたる。単に速さを競うスポーツとしてのもの。馬が走る姿の迫力と美しさ。武豊を始めとする、騎手たちの技術のぶつかり合い。血統を繋いでいく、という人間のスポーツでは中々お目にかかれないロマン。そして忘れてはいけない、成人してからは賭博にも興じている。
故人である俺の父方の祖父は、いわゆる「上級国民」だった。プリウスを自分で運転するような二流とは異なり、黒塗りの高級車に運転手が付いてくるようなお人だった。その生業は競馬の開催側にも部分的に関わるお仕事であり、それでいて一人の競馬ファンであったらしい。
初めて見た競馬の記憶は、私室に幼い俺が何故か一人招かれ、まだブラウン管だったテレビで放映されていたレースを、上機嫌な祖父の膝の上でわけもわからず眺めたものだ。お忙しく、また病にも悩まされた人だった。俺が小学生の時に、もう亡くなってしまった。
父から伝え聞く、祖父と競馬に関するエピソードは三つ。
父が一回目の大学受験に失敗した時、叱るでもなく慰めるでもなく、ただ父をWINS*1に連れて行ったという話。
イソノルーブル落鉄事件*2に大層お冠で、当時JRAの担当者を呼びつけて激怒したという話。
そしてミスターシービーが大変に好きで、普段寡黙で競馬も無言で観る祖父が、三冠が懸かった菊花賞の直線でただ一言、「……そのまま」と呟いたという話。
そうした家にあってか、日曜の昼、ゴルフ中継を見ている父に、当時まだ中坊だった俺が「競馬を見たいんだけど」と話しかけた時、父は俺を説得することはしなかった*3。
やれやれこの時が来たか、と言わんばかりの表情の父にテレビのリモコンを渡された俺が、自分の意思で初めて見た競馬のレース。それが、2012年菊花賞、ゴールドシップの勝ったそれであった。
ゴールドシップの菊花賞は、レース中盤に後方から位置を一気に押し上げてそのまま勝ち切るあまりにも豪快な競馬だった。それは、あまりにも数奇な偶然であるが、2012年から29年前の、ミスターシービーのレース運びに似ていると言われる。
当時の俺を「競馬を見てみよう」という気にさせたのも、ミスターシービーだった。今でも評価の高い、名馬にフォーカスを当てたJRAのCM、"The WINNER"、あるいは"The LEGEND"シリーズ。2012年の菊花賞において取り上げられたのが、ミスターシービーだったのである。
まるで作り話のように良く出来た偶然の連鎖はさておき、ゴールドシップのド派手なレースは、競馬ってどんなだろう、という好奇心でテレビを付けたガキを魅了するには十分だった。
俺はそれから、毎週土日の15時はテレビ画面にかじり付くようになり、当時とっくに時代遅れのハードだった初代プレステを家の戸棚から引っ張り出し、ダビスタを毎日深夜まで遊ぶような生活を送った。
加えておよそ10年。15時台だけではなく午前中のレースから見るようになったり、やるゲームがウイポになったりの変化はしたものの、俺の中で競馬熱が収まった日はない。
このブログのタイトルも、実は競走馬からとっている。
世界を股にかけ、ジャパンカップも制覇した海外の名馬である。活躍の時期には俺はギリギリ生まれていない。ダビスタにも出てくるこの強豪海外馬のことも勿論好きだが、真に俺の大好きな馬は、この馬の子孫だ。
吉田照哉の秘蔵っ子良血馬ローエングリンを父に持つ、社台生まれ社台育ち、16連敗の後に3年ぶりのG1制覇を果たした、不屈の快速馬。現在は社台SSで種牡馬をしていて、今年産駒がデビューする。俺が初めて見た皐月賞の勝ち馬であり、そこからずっと追いかけている。この馬の魅力を語ろうとしたら、それだけで1万文字書けてしまう。
まあそれは別の機会にするとして、知らない皆さんには「ウマ娘に出演NGを出した(と言われている)牧場で生まれ、育ち、今も繋養されているG1馬」が大好きなオタクが、この記事を書いていることだけわかってもらえればいい。
実のところこれはあまりウマ娘の好き嫌いには影響していない。ただ仲間内では、「好きな馬が解釈違いで出されたら気が狂ってたところだから出なくてむしろ安心した~」などと喚いている。
さて、競馬を見始めた経緯だけで長々と自語りが出来てしまう面倒なオタクが、ウマ娘に対してどういった感情を持っているのか、そろそろ書いていこうと思う。
俺とウマ娘
擬人化コンテンツは恐らく大昔から存在するが、ことブラウザ/アプリゲームにおいて、艦これをパイオニアとすることに問題はないだろう。
軍艦、刀剣、また軍艦、銃器、その他諸々。あまり詳しくはないが、そういった流れの中で、天下のCygamesが選んだのが、まさかの競走馬だった。
第一報を聞いた時思ったことは一つだった。「それは、違うだろ……」
俺は二次元美少女が大好きなキモオタで、かつ競馬にもどっぷり浸かっていた。けれど、だからこそ、アレルギー反応のような形で、それは違うだろと脳が先に喋った。それらしい理由は後付けだった。「牡馬も牝馬も全部美少女なの?」*4「馬主の許可は出たのかよ」「そもそも世界観が意味不明だろ」、そういうことを次々に思った。そこら辺のインターネット冷笑屋さん達と大差ない感想。
ただ、俺はオタクとして最低限の良心は持っていたかった。「エアプで叩くのはやめよう」「実際にプレイして、キレるのはアンインストールしてからでも遅くない」。
そして俺の歪んだ覚悟をよそに、ウマ娘は3年延期した。
まあその是非とか擦られっぷりとかサイゲの頑張りとかはさておき、肩透かしを食らった俺が初めて触れるウマ娘のコンテンツは、アニメ一期と相成った。そして、俺はあまりこれが好きではなかった。
総合的に言えば、スポ根ものとして期待を上回る、いい作品だったと思う。ただ、感動的な話を作るためのifがちょっと過剰だと思ったし、それに対してあまり心動かされなかった*5。極めて便利なオタク言葉がある。当時の俺の感情はまさに「もにょる」であった。
思っていたより、このコンテンツは競馬へのリスペクトを秘めている。その一方で、その方向性は恐らく俺とは微妙に異なる。俺としては、原作(=史実)に忠実でないのなら、数ある選択肢の中から競馬を選び擬人化する必然性は薄い。初期に抱いた不穏な感想も、別に解消されたわけではなかった。アニメ一期の自分の中での評価は、「良い作品だと思うけど、not for meの極み」というあたりに落ち着いて、今も変わっていない。
そしてアプリリリースの見通しは相変わらず立たず、俺が正直ウマ娘のことをすっかり忘れていた頃に、二期の放送が決まった。
メインビジュアルはトウカイテイオーとメジロマックイーン。この二頭は天皇賞(春)で世紀の対決と相成ったが、その結果は皆さんご存知の通り、伯仲の名レースとは言い難い。その辺りをどう昇華するのだろうか。一方で、最終話がテイオーのラストレースになるのは確実だろう。ifを挟まずとも波乱と奇跡に溢れた馬生を持つテイオーを主人公にしたのは、自分としても始まる前から見るモチベを削がれないチョイスだった。
また、そこからさほど時が経たないうちに、とうとうアプリゲームのリリース予定が「日付まで」発表された。競馬で言うならば、レースの開催も怪しまれる状態から、とうとうファンファーレが鳴ったところまでこぎつけたと言える。
一期と長い待機時間を経て、ウマ娘というコンテンツに対する自分の感情は、期待も毒も抜かれてかなりフラットな状態になっていたように思う。とはいえやっぱりnot for meだと辛いし、待たせに待たせたサイゲの新作にオタクたちが飛びつかないわけはなく、その流れにのるかそるか、決めあぐねることとなった。
しかしその後状況は変わった。二期が大変いい出来なのだ。史実を逸脱せず、キャラクター同士の関係性描写による救済と深掘りを徹底しているのが非常に面白く、ノンストレスだったし、単純に作画や展開の出来も一期に比べてレベルアップしているように感じる。
とにかく自分の中で、二期の評価は現状とても高い。ライスシャワーのキャラデザは好みだし、最終回は予想通りテイオーのラストランだろうし、このまま評価は高いまま終わるだろう。
そんな中で始まった事前ダウンロード。逡巡しなかったと言えば嘘になるが、俺は久しぶりにサイゲのゲームに手を出すことになった。そして、冒頭の通りである。
俺とウマ娘(ゲーム)
リリース前情報+初日遊んでみての感想として最初に出てきたのは、パワプロアプリとシャニマスの7:3くらいのところにあるゲームだな、という事だ。これは決してマイナスの評価ではない。カードプールや手持ちの資産が少ない中でこの手の育成ゲームを試行錯誤しながら遊ぶのは楽しいものだし、恐らくその二つが足りてきたら、気持ちよく俺ツエーできるようになるだろう。
たまたまパワプロもシャニも通ってきて、加えて重賞の日程が完全に頭の中に入っている自分にとっては極めて遊びやすく、難易度もちょうど良かったと思う。リセマラは苦手なのでしなかったが、初日のうちにはサイレンススズカでW.I.N.G.URA優勝が出来た。一方で、シャニの履修率が高いコミュニティのオタク達と遊んでいるのだが、競馬を知らない勢はいつどんなレースがあるかわからないことで苦戦しているようだった*6。
競馬アドバンテージで上手ぶり*7オタクになれて気持ちいいねえ~~などとプレイしていたら、成り行きでサークルを立てることになり、予想外に30人が早期に埋まり、周りの高いモチベにも助けられて、かなり楽しく遊べている。もにょりポイントも極めて少ない。あったとしても、ライスシャワーにお姉さまと呼んでもらえるメリットが完全に上回るだろう。なにより流石天下のサイゲ、UI周りが快適の一言だ。
ここまでべた褒めだが、不満点も書いておく。まず、このゲームにいわゆる「競馬ゲーム」を期待するのはやめた方がいい。相性・因子の構築は奥深い、あるいは謎が多いが、それは競馬ゲームの面白さの大半を占める血統のロマンとはかなり毛色が異なる。むしろシャニのEX掘りが近い*8。とはいえ、ウマ娘が本質的に競馬ゲームではないことと、このゲームが面白くないことは決してイコールではない。ただ、ジャンルが違うということだ。
多くの人が苦しんでいるのは、初期フォロー数の少なさだろう。課金で増やすことも出来ないので、今はごめんねごめんねと言いながらサークル員をとっかえひっかえしている。ちなみに4凸SSR置いてる人フォローできると世界が変わる。特にテイオーかウオッカ。マジで。
あとはガチャ周りは現状怪し目に見ている。リリース初期に乱獲できる類の石が尽きたら、デイリーで手に入る石の量はとてもじゃないがガチャに費やせる量ではない。とはいえ、この辺はやってりゃ無償石で天井できて、強くなるには限定を4凸するのが大前提のシャニで一年過ごした結果俺の中に培われた価値観だろうし、個人差はあるだろう。
総じて、大変面白い。しかしこれは、もしウマが予定通りリリースされていたら同じ感情を抱いたかは怪しい。
アニメ二作を通ることで俺のゲーム初動に対するモチベーションはフラットになれたし、シャニマスを経由した期間が無ければ、上手ぶれるコミュニティに所属できることはなかった。ゲームそのものも、ただただ権利関係やらなんやらで延期を繰り返したわけではなく、「2021年のスマホゲーム」として恥じない出来だと思う。初期のPVとかと比べると本当に全然クオリティが違う。
自分の周りだけではなく、少なくともTwitterでは大流行しているように見受けられる。長期間の延期が逆に知名度と期待を呼び、今のこの熱狂があるのだから何があるかわからない。塞翁が馬、というやつである*9。
何があるかわからないのは、それだけではなかった。
アニメやシンデレラグレイに顔を出しているのは知っていたが、ゲームの出演が内定していたのはさっぱり知らなかった。アプリリリース前夜の生放送で情報公開されたらしい。そして、一昨日サークルメンバーでメンテ中にVCしていた時初めて知った。
一番好きな馬は先述の通りロゴタイプだが、ミスターシービーは俺を競馬に導いた唯一無二の恩がある馬だ。どんなキャラクターなのか、性能なのか、いつ実装されるのか、期間限定なのか*10、不安と期待が絶えない。というか気付くの遅くて結構ガチャ回しちゃったじゃん、実装されるの知ってたら温存してたんだが、助けてくれ。マジで。
俺と今週末の競馬
サークルにも押し付け布教しているのだが、ウマから入った人は是非リアルの競馬も見て欲しい。どれくらいの速度で、どんな姿で競走馬が走るのか。ガキだった頃の俺のように、テレビを15時くらいにつければいいだけだ。地上波で見られる地域がほとんどだろう。
折角お勧めすることだし、今週末の重賞の本命馬を挙げて終わろうと思う。
オーシャンステークスは◎アルピニズム。ローエングリン×サンデー系牝馬に俺が食いつかないわけがない。調教も絶好で鞍上にルメール、重賞初制覇待ったなし。
チューリップ賞はメイケイエール。有力馬のクラシック直行がトレンドになって久しく、かなり寂しいメンバー。この中では力が違うだろう、逆らうのは無理。
弥生賞はテンバガー。前走3着でここは絶対に優先出走権を逃せない舞台、最近いいところの無いデムーロの奮起にも期待したいところ。
こんだけ長々と書く奴がヘタクソなのかよ!となるか、イキるだけあって中々やるじゃん、となるかは今週末をお楽しみに。
*1:場外馬券売り場。設置されたモニターでレースも見れるが、競馬場に比べてただ賭けるための場所で、ギャンブルジャンキーが多い。
*2:アニメ二期五話で触れられた落鉄は、恐らくこの件だろう
*3:まあ一般的に、中学生がギャンブル中継を見ようとした時、歓迎する親は多数派ではないだろう
*4:含意は、ウオッカを代表として牡馬と渡り合った名牝の偉業をどう説明する気なんだ、という事だ
*5:一期のifに不満がある、というと多くの人は「ああ、お前はスズカの復帰が解釈違いなんだな」と思うだろうが、実のところ俺が一番気に食わないのは海外産馬エルコンドルパサーのダービー参戦からの同着決着だ
*6:ちなみに少し前に流行った稲作ゲーのごとく、正解はJRAの公式サイトである。2021年 重賞レース一覧 JRA
*7:ウマだけにw
*8:ちなみに自分は巷の「インブリードが重要」という言説は、カップリングの多段発生が生じているだけで本質的には誤りだと思っている。はてさてこの上手ぶりは吉と出るか凶と出るか……
*9:ウマだけにw
*10:俺の脳は既に高山に破壊されている