【ラノベ感想】『運命の人は、嫁の妹でした。』1・2巻感想 -桜色の兎との思い出を添えて-

 

 記事タイトルが長い。

 

 

はじめに

 今回は記事名の通り本を読んだ感想で、挙句サブタイトルの通り同じ作者さんのノベルゲームの話もちょっとする気がします。

 なのでまず大なり小なりネタバレはあるんですけど、2巻段階で明らかになってるのは序の口もいいとこっぽいので、この感想文を読んでから買うとかでも全然楽しさは損なわないと思ってはいます。

 とはいえこのブログを読みに来るのは常連フォロワーと検索経由の人が1:2くらいなので、試験的に節タイトルに色を付けることにしました。

 青の節は未読で読んでも全然大丈夫な感想&布教文。緑の節はネタバレ気になるタイプの方は気を付けた方がいいかも。オレンジの節はネタバレ祭りの妄言です。未履修なら読まない方が良いと思うし、多分読んでも意味が分からん文章だと思います。

 

www.dlsite.com

 

 貼り切れんかった過去作含め全部ガチでおススメなので買ってほしいし、親しい人には俺が競馬で勝った日に言ってくれたらギフトします。

 

 

面白かったか?

 めちゃ面白い。

 まずこの本はざっくり言えば「嫁を迎えたはいいけど嫁の妹が前世で運命の人だった記憶が蘇ってきてあら大変!」という話で、所謂ヒロインレース物に分類……しようと思えばできるはず。

 電撃文庫から出てるライトノベルなので当然全年齢向けだけど、作者である逢縁先生がエロゲのシナリオライター界からやってきたのもあってか、すけべに遠慮が無い。なのに全年齢向けだからヒロインたちは未成年。すごい!

 話をちょっと真面目にしよう。すけべに遠慮がないのは、恐らくは手癖や作風でもあり、狙ってやっているフックでもあり、前世が絡むシリアスな部分を際立たせるためのジャブでもあると思う。要は、一般的な全年齢向けラブコメとは毛色が結構違うところがある。

 ・主人公大吾は根っからの善人だが、普通に色んな欲もある。

 ・女の子いっぱいいるのにヒロインレース参加者は姉妹だけっぽい。

 ・ヒロインたち視点の分量も多く、めまぐるしく視点が変わる。

 そんで1巻が終わる頃には両ヒロインとキスやら同衾やら入浴やら済ませてしまう。主人公がちゃんと嫁のことを愛しているので、それはもう当たり前ですよね?くらいの早さでラブコメ部分が進む。しっかり心情描写はやるけれど、テンポで決して焦らさない。これが大層快適で、ジャンルとしては革新的な部分だと思う。

 

 ただこの作品が一筋縄ではいかないところは、その快適さがユーザビリティというよりは「やりたいことが沢山あるから」生まれていそうなところだ。

 大吾とヒロインたちが生きているのは紛れもなく現実世界と地続きの日本・横浜だが、前世の記憶で描かれる1960年代は何やら様子がおかしい。技術レベルは近未来SFのそれだし、化け物は闊歩しているし、そもそも地球滅亡の危機に瀕している。滅亡しちまったら来世もクソも無かろうよ。

 というわけでこの『運命の人は、嫁の妹でした。』という作品は、ヒロインレースラブコメと同時に、並行世界SFをやろうとしている。ビュッフェレストランに初めて来た小学生か?最高です。

 

 そもそも作者の逢縁先生がシナリオ担当として参加しているサークルLOSER/Sは、DLsiteで本格ガチガチの同人すけべノベルゲームをぶっこんでくるすんごいとこなのだが、その直近二作、『うさみみボウケンタン』と『MECHANICA―――うさぎと水星のバラッド』はまさに、R18的な実用性とSF世界観の中を生きる人間の感情と関係性の描写、これを高いレベルで両立している作品である。

 決して小難しい設定弄りや世界観パンチに頼りすぎることなく*1、セカイの果てだろうが結局一番大事な人間の生き様を、緻密かつ淀みなく、すけべも漏らさず広げてくるのが、『うさみみ』と『メカニカ』のストロングポイントだ。そしてそのエッセンスがこのライトノベルにも満ち溢れている。

 一般的に見れば「やりたい放題」な作品であることは間違いないけれど、二作からファンになった身としてはその「やりたい放題」が嬉しくてたまらんね。

 

 というわけで面白いか?と聞かれればめちゃ面白かった。3巻以降も早く読みたいぜ。勿論未読の人にオススメもするけど、フォロワーが「くれいんが勧めてた作品」と思って触れるとかなり意外に感じると思う。これは作品は一切関係なく俺のインターネット言動が悪い話。

 

 

ヒロインレースどっちに勝ってほしい?

 うーん……

 SF面では、2巻で「二つ目の」前世、つまりまた別の世界線について描写されたことによって、どうも基底現実世界は運命的にイレギュラー側の次元であるっぽいことがわかってきた。姉である兎羽が主人公とくっついてるところからスタートして、運命から逃げきれるかって様相。

 一方、妹の獅子乃は確かに二つの前世でどうしようもないくらい主人公と強く結ばれていたわけだが、結局世界滅亡を前にして「お嫁さん」にはなれていない。運命を敵に回しているのは姉だけではなく妹も同じくだ。

 次元を跨いだ存在や、さらに上位の存在の介入も示唆されているが、それらは時に姉にも妹にも主人公にも世界にも味方する。主人公がどういった運命をつかみ取るのが「正解」か、という伏線が不気味なほど意図的にブレていて、そういう視点からの応援は困難を極める。どっちを選ぶ?という単純な二択はブラフに見える。続刊はよ読ませてくれ!おい!

 

 ラブコメ面では俺は極力自分の趣向を排して、誰とくっつけば主人公とヒロインが一番報われるかでヒロインを評価する傾向にある。強いヒロインは一人で歩んでいけるだろうと。五等分の花嫁は一花一択*2。そういう意味では兎羽chanなんですけどね。彼女もよわよわだし、別次元の彼女(たち?)の生き様も痛切なものがある。大吾の離婚の経緯や人柄を考えてもそうだ。

 こういう書き方をするってことは俺個人の趣向としては獅子乃が好きということですね。ご名答~

 

 ちょっと関係ないところだと、1巻も2巻も表紙が獅子乃だったのには結構驚いた。こういうのってヒロイン交代しながら最終巻で全員or勝者ドーン!みたいなの想像していたので。負けヒロインならぬ、裏表紙ヒロイン兎羽。どうなることやら……

 

 

どの女の子が一番好き?

 玉ノ井ゆい。

 

”「いいこいいこ。おばかなわんこのままでいてね」”

 これ、神の文章。

 決してロリコンとかではない。

 

 LOSER/S作品に一貫して、主人公には主人公足る理由がある。器と言ってもいい。大吾もやはり持っている主人公性を、やさしくおどけながら肯定する幼女に、俺の脳裏に今までの作品の主人公とヒロインたちが浮かぶ。

 決してロリコンとかではない。

 

 

2巻の前世描写について

 ファンサが過ぎるだろ、と思いつつ基底現実とリンクした世界でクトゥルフ様が出てきたことは大きな衝撃かつヒントだった。

 しかもチョイ役では全くないし、やはり並行次元の存在を認識している様子もある。大御所神格だしな。でもこの作品の現実は商品名や作品名が基本実名で出てくることが示唆する通り、我々の生きる現実と地続きである。そして我々の現実においてクトゥルフ神話はもはやオタクの一般教養であり、誰もが知る架空の神格。

 決してオリジナルではない登場キャラクターが、何やら重要なことを知っている。これはマジで困ったことで、『メカニカ』でやったトンデモ演出(ガチのネタバレだから注釈にしまいます)*3のような使い方をされそうで怯えとワクワクが同時で止まらん。これもう感想じゃないな。助けてくれ。

 

 ファンサといえばもう中庸騎士団のくだりは色んな意味でファンサでしか無くて、いやまあ過去作をやってなきゃ問題が生じるかと言われたら多分そんなことは無いのだけど、やっぱりこういうことされると嬉しいのと、でもまあこれは現状続刊読まないことには何も言えませんわね。

 

 

おわりに・余談

 感想文でした。1巻読んだ時もうちょい読んでから書きたいなと思ったのでこのタイミングになりました。ので、1巻の時の感想投稿してサイン入りタペストリー当てようキャンペーンを逃した。ばかだね~

 DLsiteのセールをだらだら見ていて見つけた『うさみみ』をプレイしてハートフルなSFにちょっぴり惹かれ、クリア後即購入した『メカニカ』の全てのクオリティが正当進化した出来にひっくり返って数日うなさかロス・メカニカロスに頭頂部まで浸った自分にとって、この作品は欲しいものを全部くれるので本当に最高。Sessions続きくれ。

 

  1巻発売日とかAmazonの配送待てなくて0時15分くらいに唸りながら電子も買っちゃったし。

 

 

automaton-media.com

 

 サークルの方では毛色の違う最新作も準備中ってことで、そっちも楽しみですね。Steamで出るらしいしフレに送り放題なのが助かる。壺送ってきたアイツやPogo送ってきたアイツにお礼参りしないとね……

 

 

*1:もちろんその完成度も高い

*2:1>3>>2=4=5

*3:「もはやフリーゲームに使える一つの曲という域を超えてしまったバンバードを、演奏者のとっておきの一撃に敢えて使う」