#BPLS2 セミファイナル 第1試合 GiGO - GAME PANIC 感想

※この記事は音楽ゲームのプロリーグ、BEMANI PRO LEAGUE』(以下BPL)の観戦記かつ、BPLや音楽ゲームについてある程度知識のある人を読者に想定しています。BPLとはなんじゃい、という方は以下の記事をどうぞ!

cranetrick.hatenablog.jp

 

 

・この記事で取り上げる試合

p.eagate.573.jp

 

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戦前の状況・両チーム戦略推測

 8チームによって争われるBPL SDVX部門もいよいよプレーオフセミファイナル。この時点で生き残っているのは半数の4チームで、奇しくも2リーグ制総当たり形式のレギュラーシーズンでLリーグに配属されていたチームたちだ。

 準決勝第1試合。待ち受けるのはその激戦のLリーグを無敗で1位通過し、その後インターリーグも大差の勝利、全体1位として堂々シード権を有し、セミファイナルからのトーナメント参加となるGiGO

 一方のGAME PANICは相手チームとの戦略が噛み合わなかったこともありLリーグ4位に沈んだものの、インターリーグクォーターファイナルを5チーム競合ドラ1・CH選手の圧倒的なキャリー力でここまで駒を進めてきた。ある意味対照的な2チームの対戦といえた。

 さて、両チームのオーダーを見る前に、セミファイナルのルールについて確認したい。

 

https://p.eagate.573.jp/game/bpl/season2/sdvx/about/regulation.html より

 

 さて、重要なのは全体としての勝ち点が19pts存在することだ。つまり引き分けや無効試合が発生しない限りは、10pts取ったチームが勝利するということになる。(これについての選手目線でのより詳細な解説がある。PICOLTEX選手の記事を参照されたし!)

 ウェイトとしては大将戦が最大で7ptsを生み出す可能性があるのに対して、副将戦の一撃4ptsは、大将戦で自選は通した場合の5-2/3pts差より大きいものになる。そして重大ルールとして、副将戦と大将戦に同一選手の出場は認められていない。どちらを重く見るかはチーム戦略と、Lv19で精度を意識できるレベルの選手が何人いるかでシビアに決まってくるように思える。

 

 さて、改めてオーダーを確認してみよう。

 

 GAME PANICはクォーターファイナルで見せた最大出力そのままのオーダー。ドラフト上位2名で単曲戦を固め、戦略や発想に経験が活きるメガミックスバトル両戦を同じ選手に任せる形。クォーターと先鋒戦・中堅戦の譜面テーマが同じという要素も多大にあるだろう。

 一方GiGOはセオリーと思われる配置を崩して、ドラフト1位のH.R.選手を副将戦に。楽曲のレベルというよりは、各選手の得意傾向と譜面テーマの合致を優先した形であると共に、「10ptsを取る」という勝利条件へのアンサーが明確なオーダーでもある。

 というのも、このオーダーが意味するのは「CH選手の圧倒をケアしたうえで、1-2-2-4の合計9ptsは必ず取る。残り1ptをどこかで奪い取れば勝ち」という戦略だ。全選手が確かな安定感で、「一曲は必ず通せる」という自信があったGiGO故に実現出来た策と言えるだろう。

 

 

試合結果

 

 そして試合はやはりこうした戦略のぶつかりあいとなり、「どこかで取らなくてはいけない1pts」を中堅戦のカウンターで取り切ったGiGOの勝利となった。 

 この一戦通じてのMVPがH.R.選手であることに異論は無かろうが、やはり実際に試合の勝敗を分けたのは、他選曲にも関わらず2位のCH選手に14点差をつけた中堅戦2曲目・涙の女神と無形のエトワル [MXM]だろう。GiGO逆転の決め手になったのは66小節目の32分鍵盤。SIRON.選手の全ピカ通過が極めて大きい。

 次いで接戦だったのは次鋒戦だが、灼熱Beach Side Bunny [EXH]、World's end [MXM]といったROUND1戦以来良いイメージがあるであろう楽曲を投げ、しっかりと点数を稼いだDPE選手が勝利。

 副将戦・大将戦における1巡目選手の無双ぶりが印象に残る一戦ではあったものの、紙一重だった次鋒戦・中堅戦の3回の2ptsこそが勝敗の行方を握っていた。BPLのチーム戦としての面白さが詰まった名試合だったと言える。

 

 

 さて、ここまで5試合無敗で運んで来たGiGO。戦略巧者であることは間違いないが、その戦略も「どの選手も送り出せば自分の仕事は確実にしてくる」という極めてマッチョな下地の上に成り立っている。

 DPE選手は大将戦で勝ち点こそ0-7となったが、自他選共にCH選手に終盤まで肉薄するほどの精度の高さを武器としている。Lv19、それもGhost Family Living in Graveyard [MXM]ほどのヘビーな譜面でその片鱗を見せ始めたのは末恐ろしいの一言。

 H.R.&SIRON.タッグはGiGO5戦目にして初のお目見えだが、これこそ本命と言ってもおかしくはないコンビ。別機種でKAC優勝の経験を持ちボルテでも遺憾なく実力を発揮する両名は、言うなれば音ゲーマー最高クラスの研究力・本番力・ハンドスピードが保証され、ボルテ一本に絞った時の爆発力も計り知れない。

 総じて火力・バランス・伸びしろを兼ね備えた陣容であり、貫禄の決勝進出と言えよう。これがドラフト時にはなんと平均VFが7番目のチームだったのだから、アドバイザーのしーけー氏は慧眼と言うほかない。

 

 

 

 一方GAME PANIC。準決勝で惜しくも姿を消すこととなったが、Lリーグ最下位からここまで上り詰めた意地と実力は紛うこと無き本物だったと言えそうだ。

 特にインター・クォーター・セミと続いたCH選手の3試合連続3タテはエースとして最高の結果そのものだ。5チーム競合ドラフト1位の面目躍如、このBPL SEASON2を経て完全に開花した選手のように思う。来シーズン以降は勿論、KAC等における”日本総大将”としての活躍にも期待したい。

 CHI8選手はリーグ戦でCH選手以上のコストを消費し八面六臂の活躍を見せた。シーズン終盤のタッグバトルにおけるチューニングに少し手こずってしまった印象があるが、初見曲2勝の結果が示すように、確かな地力と対応力を兼ね備えているプレイヤーであるのは間違いない。

 KAINARU選手は本人も述懐するように、BPLボルテ部門における24番目の指名選手。BPL以前からの大会シーンウォッチャーには馴染み深い選手で、プレーオフ以降はメガミックスバトルの門番としての地位を着実に確立しつつあった。

 最終的にGAME PANICはこのシーズン計6戦をこなしながら、なんと全ての初見曲において勝利を収めるという驚きの結果を残した。このSDVX部門における確固たる武器を手に、来シーズン以降へのさらなる飛躍が期待されるチームだ。