箱の中身は、(【ピトス・エルピス】樋口円香に関する諸考察と感想文)

(当記事は延々と樋口円香の話をします。直近の限定pSSR【ピトス・エルピス】の内容を中心に、ありとあらゆるコミュに関するネタバレを含みます

 

 

 皆さん、アイドルマスターシャイニーカラーズ、遊んでますか?僕は遊んでいる……と思っていたのですが、実はわからんマスターなんもわからんカラーズという別のゲームだったのかもしれません。何が起きてしまったのでしょうか。

 

 

 それは樋口円香さんの3枚目pSSRの登場です。2枚目であるところの【ギンコ・ビローバ】が樋口担当やシャニP担当の各地に衝撃を与えてから、もうおよそ1年が経とうとしています。

 その間にも、感謝祭、G.R.A.D.、ボックスイベ報酬【ダウト】、各種シナリオイベやノクチルサポートカードの供給は続き、樋口円香というキャラクターは掘り下げられ、発展し続けていました。そんな中で満を持して現れた、久々の限定pSSR。身構えていた我々に与えられたのは、非常に難解な示唆に富んだコミュの数々でした。

 本記事は確固たる答えを見つけたから書くのではなく、見つけるための言語化の一環として書いていこうと考えています。その辺のオタクの一つの解釈として、あまり身構えず読んでみてください。

 

 

*こんなのも書いてます

 

 

 

 

各コミュ要約

 【ピトス・エルピス】のカードコミュの内容をざっと洗いつつ、その表現や含意に自分が感じたことをまとめていきます。

 

S1:『hibi』

”心をえぐるものは”

 

 朝食の時間帯、事務所で時間を潰す樋口。意外にも彼女のチャンネルチョイスはお笑い番組で、(シャニPへの皮肉を含むので額面通りに受け取るべきではないが)最初に出てきた"オチが予想外な"芸人を酷評。そしてその直後彼女は…………筋肉系の一発芸でむせ返る。

 クールでシニカルなアイドルであるはずの樋口円香。そのまさかのツボにシャニPもオタクも驚天動地、意味深な演出に始まり身構えていたところで、「心をえぐる」ってそういう事かよ……と脱力した人も多いだろう。

 選択肢による分岐は主にシャニPの対応が微妙に変化する。一応奇跡的なタイミングで朝食を誤嚥した可能性も残っていたが、上選択肢;"だ……大丈夫か!?"で天丼にウケてしまったことで無くなったとみていいだろう。

 どの選択肢でもシャニPは「一発ネタでウケた姿を自分に見られて円香は気まずい思いをしているだろう」という仮定のもと、最も傷つけない言動を模索する。しかしこれはオールバッド。左/上選択肢のように、面白かったよなとフォローすれば違うとつっぱねられ、右選択肢では、気を遣われたことを察した樋口は最悪と呟くこととなる。

 

 一見軽い読後感のコミカルなコミュだが、実のところかなりトリッキーで、樋口円香の別のコミュとの関わりが非常に深い。

 まず、1個目のコミュがコメディ調でありながら後のコミュに深く影響するのは、【カラカラカラ】、【ギンコ・ビローバ】のそれと共通するポイントである。この後の項でも、度々この『hibi』の描写に立ち返ることになるだろう。

 また、樋口の取るであろう言動や心情をシャニPが想像している左選択肢;"お、面白かったのか……!?"は、同様かつかなり踏み込んだシチュエーションが【ダウト】の1コミュ『90%』で描写されている。

 シャニPの中に存在する「イマジナリー樋口」は作中時系列的に早い段階、シャニPに対してかなり辛辣な時期の樋口を元に生成されているところがある。『90%』でそうであったように、最悪を想像して臨むシャニPの覚悟は杞憂に終わったりもする。

 この『hibi』においては樋口がむせた時点で正解は無かったと言えるが、ここでの彼女の言動は、【ダウト】のTrue『横顔』内の「何事も、撥ねつけるくらいなら受け入れる方が楽」という彼女の方針に割と反する。とはいえ、時系列的にあちらが後なだけか、そんな余裕すら無かったのかは論拠に欠くため判断しがたい。

 そして彼女がむせ返るのは、W.I.N.G.準決勝突破後のセルフオマージュと言える。クールな表情とシニカルな言動に隠した、樋口円香の中に確かに存在する興奮。Trueへの伏線が、W.I.N.G.編共通コミュと絡める形で既に張られているのは驚くべきことだ。

 

 『hibi』というタイトルは、日常の一ページであるという文字通りの意味、そしてシャニPと樋口が送る日常の、確かな作中時間の経過を示している。二人の関係性はより深まったものになりつつも、その中の彼女の言動は、かつてから変わらぬ樋口の一面であったように感じた。

 

 

S2:『hako』

"それは"

"古い宝石箱だった"

 

 暗転したシーン、このコミュではなく後に判明することだが、自室のクローゼットで何かを見つける樋口。鍵のかかった小箱。箱の存在も中身も忘れてしまっていた彼女は、ひとまずそれを保留した。

 

 背景が戻ってきてからは、場所と時間が変わってシャニPと事務所の倉庫整理。重ねてきた年月も所属するアイドルも増えてきた283プロダクションでは仕方のないことだろう。その過程で出てきたいくつかの物品を捨てて良いものか、樋口はシャニPに判断を仰ぐ。

 特に左選択肢;"捨てるけど。でも……"、「捨てる」という行為に対する二人のスタンスが描写される。それなりに物への思い入れを持っているシャニP。「大切ではなくなったから捨てる── そうとも限らないだろう」彼の誠実かつやや優柔不断な性格がよく表れた台詞である。

 

 コミュの会話自体はとても短い。どちらかと言えば、黒背景に書かれた意味深な白字がメインの描写であるだろう。樋口の独白とも地の文とも取ることが出来る、「箱」に関する記述。

 それは、古く、中身もわからないような箱と、誰にも見つからないように、誰にも傷つけられないように、箱ごと深くに沈めた宝物。いまやその鍵は、樋口本人すら持っていない。

 ただ、今の樋口円香は、浮かび上がってきたその箱を捨てなかった。

 

 『hako』。カード名の元ネタであるパンドラの箱に関わるような言葉と描写が、多くの謎と共に展開される。箱が開くのは、もう少し先のことになる。

 

 

S3:『uru uru』

"胸を打つものは"

 

 駅のホームから話が始まる。どうやらコンサート鑑賞の帰路のようで、シャニPはそれに泣くほど感動したらしい。そんなシャニPに対して、他者の言葉を引用し、人に感動をもたらすのは演者の内面ではなく技術であると説く樋口。シャニPはお得意の「ミスター」皮肉が飛んでくると予期したものの、そうはならなかった。

 場面はあっさり変わってレッスン室、ある曲のワンフレーズを反復して練習する樋口。上選択肢;"納得いかない?"によれば修正が必要というほどのレベルではないようだが、樋口本人はこれではないと感じている。それも、主観・こだわりではなく、彼女の考える客観的な正解に届いていない、と。

 左選択肢の描写や選択肢そのものが示すように、その修正を重ねた結果喉を傷めてしまっているようだ。彼女はコミュ前半部の引用を繰り返し技術を磨く重要性を述べるが……

 

 全ての選択肢において、シャニPは樋口の言動に違和感を覚える。商売道具である喉を傷めてまで、合格点以上の「正解」を求めようとする姿。らしくない。読んでいる我々でも、そう感じることが出来る。

 この違和感は今の樋口の言動と、かつての樋口にギャップがあるからだ。それはシャニPの抱く樋口のイメージ、「イマジナリー樋口」との乖離であるし、明確に描写された──過去の樋口円香との乖離として裏付けることが出来る。

 

「笑っているだけでなんとかなる アイドルって楽な商売」

「努力に意味とかないですよ それを褒めるのって身内だけでしょ? ……私は結果がまあまあなら十分です」

 

 この記事を読みに来ているような人たちが知らないわけはないとは思いつつも、一応断っておくが、これらの言動は別にアイドルを舐め腐っているわけではなく、皮肉屋な彼女なりの「結果が全て」の言い換えだ。

 また、ノクチルの共通テーマである「言葉」とそれに対する樋口のスタンスは【カラカラカラ】のガチャタイトル/フレーバーテキストや、【ギンコ・ビローバ】全編においてかなり精密に描写されている。彼女はある種の諦念をもって"受け取る側の受け取り方が全て"という価値観をある程度持っており、それ故に基本的には自分の発する言葉に対して真摯で慎重だ*1

 前半部で樋口は演奏家の考えに同意を示したが、それは果たして彼女の真意だろうか。自身の今の行動にそぐわない理論をもっともらしく語る姿に、シャニPが違和感を覚えるのも当然だろう。

 

 『uru uru』、シャニPを涙ぐませた演奏に、彼女は何を思ったのか。かつての言動からは想像もつかない、ワンフレーズの反復練習に身をやつす樋口。一体何が、彼女を突き動かしているのか。

 そしてそれは彼女の変化なのか。成長なのか。結論が出るのは、やはりもう少し先になる。

 

 

S4:『kara su』

 比較的独立したコミュが続いたが、ここで初めて『uru uru』と地続きであるコミュが登場する。冒頭の暗転白文字も無い。

 過度な練習の結果、やはり樋口は喉を傷めてしまったらしい。事務所の外壁に作られてしまったカラスの巣の状況を確かめるべく屋上を訪れたシャニPは、そんな彼女と偶然出くわす。

 様々なものをかき集めて巣を作る習性を持つカラスの巣は、やはりというべきか人間の捨てたゴミも多く含まれていた。そんな巣を眺めながら、カラスの巣にも興味を持つシャニPと、声の掠れた樋口が、短い会話を交わす。

 シャニPが事務所に戻ると、原因は選択肢次第だが、件の宝石箱が壊れて中身が明らかになっていた。はてさて肝心の中身は……というところで幕を閉じる、短いコミュである。

 

 上選択肢;"雛も巣立った後みたいだ"の後のコミュニケーションは非常に興味深い。

 カラスという野生動物の事情や心理まで慮るシャニPに対し、樋口は表情をコロコロと変えた後、「なんでも守ろうとするのは癖?」「それから詮索するのも」と問いかける。シャニPの持つプロデューサー性というものは、(彼がシャニマスという作品の狂言回しであるというメタ的な視点も含めて)天性の、最初から持っていたものだ。

 問いかけに対するシャニPの返答は描写されないが、恐らく彼はことも無げに笑って見せるだろう。あの【ギンコ・ビローバ】True、『銀』でそうであったように。

 

 烏、枯らす、空の巣……『kara su』というコミュタイトルはこのコミュの様々な要素にひっかかった言葉遊びだ。そして、その全てはTrueエンドに向けた、短くも力強い助走である。

 

 

True:『gem』

 箱には何も入っていなかった。

 

 

 存在も忘れてしまうような箱に、大切なものをそのままにしておいたはずがないと語る樋口。『hako』で出た事務所の廃棄物と共に捨てておいてくれと頼まれたシャニP。彼は箱の持ち主のプライバシーを尊重して、『kara su』の時点では中身を確かめていなかったのだが、拍子抜けしてしまう。

 鍵のかかった宝箱。果たして本当に何も仕舞われていないなんてことがあるだろうか?

 

"その時、なにか音がした"

 

 箱は、オルゴールだった。樋口が一度は手にしつつも、中身が無いと知るや捨てていいと言ったその箱は、箱自体に価値があったのだ。

 描写される時系列は、喉を治した樋口が再び自主レッスンに取り組むシーンと交錯する。レッスン室に訪れたシャニPと、樋口の内心が、時にシンクロし、時に反発する。

 樋口が目指した歌声は、彼女の持つ建前や合理をぶっ飛ばすほどの、確かに聴衆に感動を届ける「正解」だ。それはもはや技術では辿り着かない領域にあるものであり、試行錯誤はいたずらに彼女自身を傷つける。

 しかしシャニPは、そんな「正解」をがむしゃらに目指す彼女の姿そのものにこそ、とても大きな価値を見出す。

 

 「激情」。シャニPは、樋口円香が確かに持つその輝きを、そう称した。

 

 

 

箱の中に残ったものは何だったのか?

 ここからは、あえて作中描写に触れるに留めたTrueエンドを中心に様々な事を整理していきたい。

 【ピトス・エルピス】というカード名は明らかにパンドラの箱の逸話から取られたものであり、ピトスは「箱」、エルピスは「箱の中に残ったもの」を意味する*2。宝箱、あるいはピトスとイコールで結ばれるのはもちろん樋口円香その人だ。今まで知らなかった一面をシャニPがコミュ力や誠実さでこじ開けるという構造は、樋口に限らずシャニマスのプロデュースイベントの屋台骨である。

 つまり、明示的にも暗示的にも「箱が開いた」このカードにおいては、もちろん箱の中に残った「エルピス」とは何かを問わねばならない。解釈の助けになるはずの、肝心要の宝箱は空っぽであった。

 

 その答えは簡単で、シャニPが言う通り、「激情」であるのだろう。樋口は時折皮肉っぽくアイドルの世界や努力を嘆くが、その実彼女自身は120点を目指してしまうところがある。値踏みや失望を恐れてことも無げに振舞って見せるものの、彼女の本質はそこにはない。

 樋口のアイドルに対しての取り組みはW.I.N.G.共通コミュの中盤頃からずっと、真摯かつオーバーワークだ。理想に対してがむしゃらに取り組む、そんな「激情」を、箱に仕舞われていたもの、そして箱そのものに宿る価値として、シャニPは確信したわけである。

 答え自体はシャニマス側があっさり教えてくれたが、真に重要な点はそれが「最初から秘めていたもの」として描写されたことにあると考える。『uru uru』の項の最後に変化か、成長かと問うたが、その実どちらでもない。アイドルとしての活動に対する激情や真剣な取り組みは決して後から生えてきたわけではなく、かつてより樋口円香が大切に持っていたものだということだ。

 ただ、それを樋口はすっかり忘れてしまっていた。捨ててもいいものだとすら考えていた。箱が開いてなお、自分では気づいていなかった。それが、シャニPの目に見えるところで輝きを放つようになった。

 この激情を、魅力を、秘められた宝物を、シャニPは正しくプロデュースしていくことができるだろうか?今後のコミュからも目が離せない。

 

 

箱から出て行ったものは何だったのか?

 問題はこちらだ。パンドラの逸話からこのカードを考えるならば、箱の中身は「残ったもの」だけではなく「出て行ったもの」を考えなければならない。

 

 ここまでイマジナリー樋口の話を何度かした。シャニPや我々の中に存在する、「樋口こんなこと言いそう~」という樋口である。しかしそんな樋口は……このカードにおいてかなり鳴りを潜めたように思う。

 やや棘のある反応や皮肉は健在だし、シャニPのいう事に反抗したくなるとは口にするものの、過去ほどの攻撃力の罵倒は見当たらず、なんと得意の「ミスター・○○」は【ピトス・エルピス】において不発である。浅倉をだまくらかしてる胡散臭い大人への本気の反抗は無くなり、信頼できる仕事のパートナーへの軽口程度に収まっていると言えるだろう。

 それでもなおシャニPのイマジナリー樋口がこのカードや【ダウト】で過去のイメージに留まっている理由の一つは、彼女のリアクションが迂遠であることにある。もっと簡単な言葉で言えば、「素直じゃない」。

 

 リアクションは、一見箱の話題とは関係のない『hibi』、『uru uru』においてかなり入念に描写されている要素だ。人は、他人の感情を、表出する表情や言葉から推察することしかできない。樋口はアイドルとして観衆に感動を届けようとしている。リアクションを引き出そうとしている。にもかかわらず彼女自身のそれは、虚勢が多分に含まれている。

 その結果として、シャニPは樋口円香の実像を掴み切れていない。これは愚直と言えるほど真っすぐで時折察しの悪いシャニPの責任でもあるし、素直じゃない上に本心を口にしない樋口の責任でもある。

 【ピトス・エルピス】の中でシャニPは、樋口円香という偶然開いたパンドラの箱に激情を見つけることが出来た。果たして、その箱から既に敵意が無くなっていた*3ことにも気付くことが出来るだろうか?

 

 

シャニPから見える樋口円香とは

 シャニPの中の樋口円香の評価はとても高い。全ての始まりである出会いのコミュ『夜に待つ』において、立ち去ろうとする樋口を引き留めるためとはいえ「ダイヤの原石」という言葉が出てくるのは今思い返せば相当なことだ。

 そして最近は、アイドルとしての資質以上に、彼女の人間性に共感している節がある。【ギンコ・ビローバ】『偽』、G.R.A.D.『椅子の背もたれに』『願いは叶う』における樋口の言動とそれに対する悩みは、モブアイドルを導き、共に歩むという「疑似プロデュース」行為の描写を通じて、シャニPに重ねられる。

 樋口円香がある程度持って生まれたアイドルとしての才能は、同じくG.R.A.D.やサポートカード【UNTITLED】*4における業界人の評価に裏打ちされるが、それはいつの間にかシャニP視点では語られなくなる。作中時間の経過とともに、シャニPが樋口の別の魅力を見出していったからだと考えることは出来ないだろうか?

 【ピトス・エルピス】は全体を通してまさにそういった話で、樋口に秘められていた輝きの一端を、シャニPが見つけ出したという話だ。彼女が持っていた熱意や愚直さ。彼は激情と称したが、それは元々シャニPの持っていたアイコンである。

 【ギンコ・ビローバ】の頃、いや、W.I.N.G.編『二酸化炭素濃度の話』の時から、樋口円香の中にある「プロデューサー性」の描写は重ねられてきた。だから、第四の壁の向こうにいる我々は、二人が実は似た者同士であることを知っている。

 そしてシャニPは、『gem』で初めて確信することになる。シャニPの語りと樋口の声がシンクロするという演出で表現されたそれは、これ以上無いカタルシスだ。

 

 カラスたちのように、誰かが捨ててしまうものに価値を見出す存在がいる。シャニPのように、誰が捨ててしまうものも、出来る限り抱えてあげたいと願う人がいる。樋口円香が忘れ去り、捨てようとすらしていたそれを、彼女のプロデューサーが今拾い上げた。【ピトス・エルピス】は、そういうエピソードだったのではないだろうか。

 

 

彼女が目指すアイドルとは

 果たして、激情に導かれるままに樋口円香が目指していた「正解」はどこにあるのか。……それは、かなり明示的に描写されている。

 

 『hibi』において、樋口は"オチが意外な"芸人に全く興味を示さない一方で、小手先ではなく直接届く、筋肉一発ネタにむせ返る。『uru uru』においては、技術が大事なのだと嘯きながら、そこからTrueエンドに至るまで、聴衆を揺さぶる一つの「正解」を目指し続ける。

 技術ではどうにもならない、激情では届かない。本能に直接訴えかけるような、"きれいな音"。"もっと精巧で、複雑で、繊細で"。"透明な音"──

 

 

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 浅倉透

 

 

 樋口円香は、誰もが惹かれる幼馴染の圧倒的な才能に、並び立とうと……いや、抜きん出ようと、もがいている。

 G.R.A.D.編において語られる樋口の苦悩。ある程度の才能とある程度の努力で、大体のことに合格点を出せてしまう。だからこそ、自分の歩みは、軽い。軽やかであること、それは誉め言葉でもあるはずだ*5

 それでもなお、彼女はG.R.A.D.決勝のステージ、その最後のステップにおいて、強く重い一歩を踏み込んだ。

 

「透にできることで、私にできないことはない」

「知ってる わかってる 私だけは 浅倉透を」

 『天塵』、【UNTITLED】で語られた感情が、アイドル樋口円香に重みを与え始めた。G.R.A.D.を経て、樋口は、あえて困難な道を選んだ。その一歩目はシャニPに見えていなかったかもしれない。

 しかし今、彼女の激情をシャニPは確かにその目に捉えている。

 

 

 

雑記

 少し脇道に逸れた考えや、その他諸々について箇条書きで。

 

*コミュ雑感

・TrueのシャニPのテキストで樋口の声がする演出ありえんビビった、自分は初見なので初めての試みなのかなと思ったけど、シャニマスの全部のコミュを読めてるわけではないので……他にあったら教えて!

・あまり重要でないので省いたが、3コミュが鑑賞帰りなのは【ギンコ・ビローバ】と重複する。その時は業界人から招待頂いた試写会だったようだが、今度は一切描写が無い。…………デートかもしれない。

・G.R.A.D.編、アイドルとしての成功の為に捨て身で張り切るモブアイドルを、笑えなかった、笑って欲しくないと言ってしまった樋口。そんならしくない姿も、彼女の激情の一部と言うことが出来るだろうか。

・今までのSSRフェス衣装はいずれも、ノクチルのユニットカラーであり、浅倉透のパーソナルカラーであるブルーが基調だったが、ここに来て樋口の色に変えてきている。もちろん3周目衣装のコンセプトがそうだ、というだけの話ではあるのだが、そのタイミングで浅倉への挑戦というテーマを盛り込んできたライター陣にはただただ脱帽である。

・全てのコミュ、そしてTrueが、今までの樋口シナリオの全ての要素を伏線として拾い上げ、彼女のこれからの方向性を示す、恐ろしい完成度のカードだった。俺はもうシャニマスが怖えよ……

・実はブログを書き始めた時点では、自分の中で全く整理しきれていなかった。言語化というプロセスの重要性が身をもってわかる。わからんマスターちょっとわかるカラーズくらいにはなってきたかもしれない。

・時間の変化と今、そして未来というエッセンスは【つづく、】浅倉透にも垣間見えた。ユニイベシナリオも段々と、単なる幼馴染軍団ではなくアイドルユニットとしてのノクチルの歩みと方向性を照らしつつある。3周目ノクチルの共通項になるのかもしれない。

 

*関係性

この女の関係性が凄い!2021 Pドルも百合厨もまとめて絡めとる激重感情の鬼、【Feb.】や【雨情】で濃厚なまどこい・ひなまどを供給してきてやっべぇなあ~って思ってたところにこのエルピスですわ、もう狂う!

・【ギンコ・ビローバ】のコミュに登場するモブアイドルがG.R.A.D.編にしっかり再登場するというのは(G.R.A.D.編は浅倉や他ユニットのアイドルでも割と本筋に名無しキャラが絡む傾向はあるが)ちょっと意外だった。読んでなきゃ理解が進まないというほどではないが、限定カードのコミュの要素が共通プロデュースシナリオに関与してくる展開であったわけだ。これが示唆するのは…………ランディングポイントのシナリオに備えよう。

・W.I.N.G.の「笑っているだけの」「控室で泣いてる」アイドルと同一人物なら、限定初出のモブではなくなる。実はここ、宣材写真の撮り直しのシーンで示唆はされているけど、確定ではない。同じだったらもう完全に樋口円香に人生最初っから最後まで狂わされてエレベーターで告っちゃったモブアイドルである。責任取れ樋口

 

*性能

・Viノクチル……どう?回避時バフ発動ばっかで肝心の回避がパッシブ頼りなの結構苦しい気がする。雛菜3週目に何とかしてもらいたい。

・全体4倍のなかでは付随効果もパッシブも徹底的にグレフェス向けで、プロデュース中に真価を発揮するタイプではない。コミュの白転も長いので、アイドルロードの方が結果的に早そうだ。……何が言いたいかというと、来月あるアレにおける採用率はあまり高くないだろう。

 

*@imassc_official

・オタクは二次元美少女の実在性が大好き。俺はオタクなので、当然雛菜の一日Twitterに狂った。狂ったやつ全部上げてくとキリないので、樋口絡みだけピックアップ。

 

ンフw(キモオタスマイル)

 

質問した人、もしかして未来予知とか出来る?

 

良すぎるだろ………………

 

・サマーアイドル2021

この組み合わせを選んだオタクのみんなに感謝。

 

 

*1:例外はある。後に述べる。

*2:ピトスが箱というのは厳密に言えば誤訳であるようだが、入れ物と言う点に相違はなく、このカードで宝箱が描写されているためここでは箱という表現に一貫する。またエルピスは"希望"とされることが多いが、多分に説話的な要素を含み解釈は大いに割れるとのことなので、希望はミスリードに近く、箱の中に残ったもの、それ以上でも以下でもない情報だと考えている

*3:そして敵意を捨てた彼女は、憧憬、羨望、嫉妬、その全てを込めて、ぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまえばいいのにと願う女である。

*4:このカードは更に上回る天性の才能を持つ浅倉との比較と激重感情としての文脈が強いが、一応描写としてあるので

*5:対極である重い歩みというものは、モブアイドルのそれであるし……何より今のシャニマスで言えば、七草にちかのそれである。恐ろしいぞ……